タイトル:「ちょっと待った!夫婦別姓」

内閣府世論調査の詳細

(2004.08.31)

1. 昭和51[1976]年 「婦人に関する世論調査」

質問番号 Q10
質問文 話は変わりますが,現在の法律では,結婚した夫婦は同じ姓(みょうじ) を名のることになっていますが,多くの場合女性の方が姓(みょうじ)をかえています。 働く婦人の中には,「姓(みょうじ)をかえると仕事をする上で不便なので, 夫婦が別々の姓(みょうじ)を名のることを認めてほしい」という意見をもつ人もいます。 あなたは,夫婦が別々の姓(みょうじ)を名のることを認めた方がよいと思いますか, それとも現在のように別々の姓(みょうじ)は認めない方がよいと思いますか。
直前の質問の流れ 女性の労働に関する質問
有効回答者の構成 全国20歳以上の女性4,134人
回答の分布 別姓を認める 20.3%
別姓を認めない 62.1%
不明 17.6%
分析:

まず調査そのものが「婦人に関する世論調査」であり、女性問題、男女問題に 特化した調査の中で女性に対してのみ行われた、という点に留意したい。

同様に質問の流れとしても、まず女性が社会で就労する際の問題等についての 意識を問う質問が続いたなかで、「話は変わりますが」として登場する。

質問文の中でも、別姓の必要性について(1)女性の改姓のほうが多いこと、 (2)それは「働く女性にとって」不便であること、を挙げている。

この時点では男女問題の視点から、女性の就労にとって女性の改姓が多いことが 問題とされていた、ということがわかる。

そのうえでストレートに別姓を認めるか否かという質問をして、 62.1%(2567/4134人)が「認めない」と答えている。

ちなみにこの調査で何らかの職業を「持っている」と答えた人は51.4%で、 もし仮に職業上の「不便」が相当に一般的なものであれば、 この質問の回答の反対の多さは説明がつけにくい。

2. 昭和59[1984]年 「婦人に関する世論調査(II)」

質問番号 Q27
質問文 現在の法律では,結婚した夫婦は同じ姓(みょうじ) を名のることになっていますが,多くの場合女性の方が姓(みょうじ)を変えています。 働く婦人の中には,「姓(みょうじ)を変えると仕事をする上で不便なので, 夫婦が別々の姓(みょうじ)を名のることを認めてほしい」という意見をもつ人もいます。 あなたは,夫婦が別々の姓(みょうじ)を名のることを認めた方がよいと思いますか, それとも現在のように別々の姓(みょうじ)は認めない方がよいと思いますか。
直前の質問の流れ 婚姻と年金に関する質問
有効回答者の構成 全国20歳以上の女性2,397人
回答の分布 別姓を認める 19.4%
別姓を認めない 57.4%
わからない 23.2%
分析:

前回(1.昭和51年)と質問の内容そのものは大きく変わっていない。

変わったのは(1)調査サンプル数が5,000人から3,000人に減った。 (2)全体的に質問項目が増えた。(3)「話は変わりますが」がなくなった。 (4)回答の選択肢の「不明」が「わからない」に変わった。の4点。

結果としては「認める」「認めない」ともに減少し、「不明/わからない」が増えた。

これは単純に考えて統計誤差の範囲内ということと、「不明」よりも「わからない」の ほうが選択しやすくなった、という点くらいしか変化がないということだろうと考えられる。

3. 昭和62[1987]年 「女性に関する世論調査」

質問番号 Q18
質問文 あなたは,夫婦が別々の姓を名のることを認める方がよいと思いますか, それとも現在のように別々の姓は認めない方がよいと思いますか。
直前の質問の流れ 男女どちらに生まれたいか、どちらが楽か、 といった男女比較の質問と結婚に関する質問
有効回答者の構成 全国20歳以上の者3,783人
回答の分布 認める方がよい 13.0%
認めない方がよい 66.2%
どちらともいえない 16.4%
わからない 4.4%
分析:

前回(2.昭和59年)との違いは(1)調査サンプル数が3,000人から5,000人に戻った。 (2)調査のタイトルが「婦人に関する」から「女性に関する」に変わった。 (3)回答者が女性だけでなく男性も対象となった。 (4)質問文中の別姓に関する説明の部分がすべて削除された。 (5)回答が「認める/認めない」から「認める方がよい/認めない方がよい」に変わった。 (6)回答の選択肢に「どちらともいえない」が増えた。の6点。

この回はそれまでの二回の調査に比べて、調査項目の作成者がいろんな工夫をしたことがうかがえる。

まずこの回から男女問題とのかかわりをあまり強調しない質問となった。

調査対象じたいが男性も含めるようになったこととあわせて、それまでは「女性の立場からの主張」 という印象を強く与えすぎたという反省によるのではないかと推測される。

また、別姓を必要とする理由の記述がなくなったことにより、実際に「働く女性にとって不便」 かどうかを判断基準とされる可能性は低くなり、単に「別姓の夫婦が存在してもよいかどうか」 という質問に変化している。

このあたりは推進派グループの戦略転換、方針転換と軌を一にしているのではないか。

それだけの努力と工夫にも関わらず、結果は逆に「認める方がよい」は史上最低、 「認めない方がよい」は史上最高の数値となった。これは男性も回答者に加わった影響もあると思われる。

「認める方がよい」は新設された「どちらともいえない」にも負ける始末。

全体の約2/3の人が「認めない方がよい」と答えており、最初の調査からすでに10年を経過しているのだから、 通常の感覚であれば「日本では別姓導入は難しい」と考えるところだろう。

ところが実際にはこの後も「賛成派多数」を導き出すためのさまざまな工夫を加えた調査が、 さらに十数年にわたって続けられていくのである。

4. 平成2[1990]年 「女性に関する世論調査」

質問番号 Q4, SQ
質問文 Q4 婚姻の際,現在は夫婦が同じ姓を名のることになっていますが, 夫婦が同じ姓を名のるか,別々の姓を名のるかを,法的に選択できるようにする方がよいと思いますか, それともそうは思いませんか。
SQ あなたは,法的に夫婦別姓を選択できるとしたら,別姓にしたいと思いますか。
直前の質問の流れ 職場での男女平等、婚姻に関する質問
有効回答者の構成 全国20歳以上の者3,751人
回答の分布(Q4) そう思う 29.8%(1,118人→SQ)
そうは思わない 52.1%
どちらともいえない 14.7%
わからない 3.4%
回答の分布(SQ) そう思う 24.5%(274人=全体の7.3%)
そうは思わない 52.4%(586人=全体の15.6%)
どちらともいえない 18.7%(209人=全体の5.6%)
わからない 4.4%(49人=全体の1.3%)
分析:

この回もそれまでの調査とはかなり変化した。

まず、それまでは「別姓を認めたほうがよいか、認めないほうがよいか」という聞き方だったのが、 この回からは「法的に選択できるようにしたほうがよいと思うか、思わないか」という聞き方に変わった。

夫婦別姓に関して「選択的」という言い方がさかんに使われ始めたのもこの時期だったかと思う。

「選択だから同姓を選択する人には影響がなく、別姓という選択が増えるだけです」 というおなじみの論理が登場したころである。

これは推進派グループが「別姓に対してこれほど反対が多いのは、 みんなが別姓になるかのような錯覚による誤解が原因だ」との(実は誤った)分析にもとづいて、 「選択的」を強調しようという方向に戦略転換したということだろう。

その効果があったのかどうか、以前に比べて少しだけ容認派の割合が増えたが、 しかしとうてい大勢を覆すほどの変化は起きなかった。

もう一つ重要な変化は、この回で初めて「自分が別姓で婚姻したい」という希望者の割合を調べたことである。

いくら推進派の人たちが「別姓を実現しよう」と掛け声をかけても、 実際には普通の人の周囲にはそれほど切実に別姓を希望する人というのは見当たらない。

おそらくその点に気づいた推進派が、「実際にこれだけの数の人が希望している」という 数値的根拠を得たかったために、このような質問が加わったのではないか。

しかし結果を見ると実際には全体の7%程度しか希望者がおらず(しかも各個の切実度は不明)、 「別姓を認めたほうがよい」と考える人の中でも「自分がどうしても別姓を必要とするから」 という理由で賛成している人の割合はかなり低いのだという事実を露呈するにとどまった。

5. 平成6[1994]年 「基本的法制度に関する世論調査」

質問番号 Q7, SQa1, SQb1, SQa2, Q8
質問文 Q7 我が国の法律(民法)では,現在,婚姻の際,夫婦が同じ名字(姓) を名乗ることが義務付けられていますが,当人たちが希望する場合には,夫婦が別々の名字 (姓)を名乗ることができるように,法律を変える方がよいと思いますか, それともそうは思いませんか。
SQa1 そう思われる(Q7)理由を,この中から2つまで,お答えください。
SQb1 そうは思われない(Q7)理由を,この中から2つまで,お答えください。
SQa2 希望すれば,夫婦が別々の名字(姓)を名乗れるように法律が変わった場合, あなたは,夫婦で別々の名字(姓)を名乗ることを希望しますか。あなたが, 結婚なさっている,いないにかかわらず,お答えください。
Q8 希望すれば,夫婦が別々の名字(姓)を名乗れるように法律が変わった場合を想定してお答えください。 別々の名字(姓)を名乗っている夫婦に二人以上の子どもがある場合, 子ども同士(兄弟・姉妹)の名字(姓)が異なってもよいという考え方について, あなたは,どのようにお考えになりますか。
直前の質問の流れ 犯罪と刑罰に関する質問のあと、唐突に男と女どちらに生まれたかったか、という質問
有効回答者の構成 全国20歳以上の者2,113人
回答の分布(Q7) そう思う 27.4%(579人→SQa1,SQa2)
そうは思わない 53.4%(1,128人→SQb1)
どちらともいえない 17.0%
わからない 2.2%
回答の分布(SQa1・2つまで複数回答可) (ア) 婚姻の際に,いままで慣れ親しんだ名字(姓)を変えることには苦痛があるから 13.8%(80人=全体の3.8%)
(イ) 現在の制度では,ほとんどの場合,女性が名字(姓)を変えることになり,男女平等に反するから 26.9%(156人=全体の7.4%)
(ウ) 婚姻の際に,名字(姓)を変えると,それまでに得ていた仕事上の信用を失うなどの不利益があるから 29.2%(169人=全体の8.0%)
(エ) 現在の制度では,一人っ子同士の婚姻などの際に,家の名前を残すために婚姻が難しくなる場合があるから 24.4%(141人=全体の6.7%)
(オ) 別々の名字(姓)を名乗りたいという夫婦がいるのなら,これを禁止するまでの必要はないから 58.7%(340人=全体の16.1%)
(カ) 外国でも夫婦が別々の名字(姓)を名乗ることを認める国が多いから 7.4%(43人=全体の2.0%)
その他 0.5%(3人=全体の0.1%)
わからない 1.6%(9人=全体の0.4%)
回答の分布(SQb1・2つまで複数回答可) (ア) 名字(姓)は,家族の名前なので,夫婦は同じ名字(姓)を名乗るべきだから 45.0%(508人=全体の24.0%)
(イ) 夫婦,親子が同じ名字(姓)を名乗ることによって,家族の一体感が強まるから 54.4%(614人=全体の29.1%)
(ウ) 夫婦,親子が同じ名字(姓)を名乗ることによって,他の人からも,その人達が家族だとわかるから 30.9%(349人=全体の16.5%)
(エ) 夫婦が同じ名字(姓)を名乗るという制度は,日本の社会に定着しているから 28.7%(324人=全体の15.3%)
その他 1.3%(15人=全体の0.7%)
わからない 0.8%(9人=全体の0.4%)
回答の分布(SQa2) 希望する 19.3%(112人=全体の5.3%)
希望しない 52.0%(301人=全体の14.2%)
どちらともいえない 21.2%(123人=全体の5.8%)
わからない 7.4%(43人=全体の2.0%)
回答の分布(Q8) (ア) 子ども同士の名字(姓)が異なっても構わない 14.2%
(イ) 子ども同士の名字(姓)は同じにすべきである 68.9%
どちらともいえない 11.1%
わからない 5.8%
分析:

ここに来てこの調査はもはや何の目的による調査かわからないほど複雑になってきた。

女性問題の調査の枠から飛び出し、死刑制度などと肩を並べて「選択的夫婦別姓について」という 一項目を「基本的法制度に関する調査」の中に入れるところまできた。

質問項目も増え、かなりつっこんだ具体的なことも質問するようになっている。

まず目につくのは、質問文で「義務付けられている」という言葉を使うようになったことだろう (実際にはこの表現はあまり妥当とはいえない)。

このあたりから推進派が「同姓の強制は人権侵害」というようなことを言い出したのではないかと推測される。

つまり現行の同姓制度に対する負のイメージを醸成しようとの意図がありそうだ。

次に別姓を認めたほうがよいかどうかそれぞれの意見についてその理由を複数回答(二つまで) で問うているが、認めたほうがよい理由のほうが多岐にわたり項目数が多いのに対して、 認めない方がよい理由のほうは項目が少なく、互いに内容がかぶっている印象がある。 どうも推進派の人たちが反対派の主張していることをあまりよく理解できていないことの証左のようにも思える。

また、母集団数の異なる二つの群に対して別々の質問をし、それぞれの割合を並べるのは、 統計的に誤解を招きやすい設問の仕方である。

しかし解析してみればわかるとおり、「別姓を認めたほうがよい理由」として最も多くの人が挙げた 「(オ) 別々の名字(姓)を名乗りたいという夫婦がいるのなら,これを禁止するまでの必要はないから」 ですら、そう答えた人の数(340人)は「別姓を認めないほうがよい理由」の4つの選択肢のうち上位3つのそれぞれの 人数(614人,508人,349人)よりも少ない。

しかもその理由は「別姓であることが必要な理由」を問わず、単に「どうしてもそうしたいという人がいるのなら、 禁止するほどのことはない」という、いわば「無関心容認派」で、これが賛成側の最大理由であり、 かつ反対理由のほとんどよりも人数が少ない、ということである。

このことは、この調査をあまり注意せずにさらっと読んだときに感じる印象とはずいぶん異なるものである。 つまりそれは統計のマジックだということができる。

また、母集団のサンプル数が3,000人で、うち有効回答数が2,113人だが、このうちQ7に「そう思う」 と答えた人は579人しかいない。さらにその579人に対してSQa1とSQa2の質問がされたわけだが、 これは「日本国民の世論調査」としてはあまりにも母集団数が少なすぎ、統計的な信頼度はきわめて低い。

そして前回(4.平成2年)の調査で初めて質問として登場した別姓での婚姻希望者だが、 今回はわざわざ「あなたが,結婚なさっている,いないにかかわらず,お答えください。」 と書き添えることで、既婚者が「もう結婚しちゃったからどうでもいい」と考えることを 防ごうとしたように見えるが、結局前回が全体の7.3%だったものが今回は全体の5.3%にまで後退している (といっても母集団数が少なすぎるのでじゅうぶん統計誤差の範囲内だろうが)。

ここまでの調査を見れば、明らかに推進派かその意向を受けた人たちによって、 推進派に都合のよい結論を導き出そうという細工の跡が数多く見られるにもかかわらず、 結局世論は推進派が思っているほど積極的には選択制度を支持していないことばかりが 明らかになっているのである。

最初の調査から18年(!)、これほどまでの必死な活動にもかかわらず、 世論はたいして変化していないどころか、関心すら持っていない様子が統計から見て取れる。

あなたはその経緯を見て、なぜこの人たちがここまでするのか、理解できるだろうか?

6. 平成13[2001]年 「選択的夫婦別氏制度に関する世論調査」

分析:

この調査に関しては、選択制度そのものだけで独立した調査となり、 膨大な項目数でかなり細かい質問をする内容になっているため、 ここで全項目を引用して分析するのは難しい。

リンクのページにリンクを張ってあるので、 ご自分でよく読まれて内容を確認していただきたい。

ちなみにいきなり最初に「本概要の内容を引用された場合、 その掲載部分の写しを下記あてにご送付ください。」と書いてあるが、 内閣府ともあろうものが、評論・批評における適正な引用の自由が認められているということを しらないはずはあるまい、と思うのだが、いったいこれは何に対する防御策なのか、理解に苦しむ。

この回の調査が「はじめて賛成派が反対派を上回った」とマスコミで大いに喧伝されたものである。

この調査についての疑問や問題の指摘はすでに多くの方がさまざまな場所で行われている。

これ以前の調査においても、明らかに推進派の圧力を受けて、 推進派に有利な結果を出すための誘導的要素がさまざまに工夫されて盛り込まれているのが読み取れるが、 この調査は、それにもかかわらず賛成が多数にならないことに焦った推進派が、総力を結集してなんとか 「賛成が多数になった」と言えるようにしようとしたことがよくわかる。

ということは取りも直さず「多くの人に必要とされ支持される制度であるから導入すべき」 と本気で考えているのではなく、導入そのものが先に目的として存在していて、 これらの調査はその権威付けのための道具に過ぎないということになる。

具体的な内容についてだが、まず選択制度に対する賛否を問う質問の前に、 これまで選択制度導入の理由として挙げてきた内容について、「そういうことはあると思うか」 「そう考える人をどう思うか」などの質問が並ぶ。

つまり賛否を答える前に「こういう理由で別姓が必要だという人がいる」 ということを印象付けるようにできている。

また、実際にどれほど存在するかも定かではない「双方がともに名字(姓)を変えたくないという理由で, 正式な夫婦となる届出をしない人」という存在を出し、「そのような内縁の夫婦は法律(民法) 上は正式な夫婦として認められませんが,あなたは,そのような男女についてどのように思いますか。」 と問うて「同じ名字(姓)を名乗らない以上,正式な夫婦とは違うと思う」と「 同じ名字(姓)を名乗っていなくても,正式な夫婦と同じような生活をしていれば, 正式な夫婦と変わらないと思う」から回答を選択させている(Q5のSQ)。

これなどは非常に姑息な誘導だ。「こういう人がいるんじゃないですか?」と問いかけておいて、 「でもそういう人は夫婦として認められないんですよ」と、 あたかもそれが不当なことのように示したうえで、「名字が同じか違うかで正式な夫婦かどうかが決まるか」 というに等しい質問をしている。

これは完全なすり替え以外の何者でもない。名字が同じではないから正式な夫婦ではないのではなく、 名字を同じにすることを(自らの意志で)拒むから戸籍上の夫婦になれないのである。

事実婚(内縁)を個人的な内面の感覚として夫婦とみなすかどうかと、 戸籍上の婚姻に婚氏統一が必要かどうかはまったく別の問題だ。

さらにQ6とQ7では別姓が家族の一体感(きずな)に影響するかどうかを問う。

その問い方も「何か影響が出てくると思いますか。」で、まるで「何か影響あるの?」 と反問しているかのようだ。

しかも致命的におかしいのはQ7「あなたは,夫婦の名字(姓)が違うと,自分と違う名字(姓) の配偶者の父母との関係に何か影響が出てくると思いますか。次の中から1つだけお答えください。」 だ。

そもそも夫婦の名字が同じであろうがなかろうが、自分と配偶者の父母の名字が同じかどうかとは関係ない。

そして別姓を希望する人の中には、配偶者の父母(舅・姑)との関係が良好でないから 心情的に同じ氏を名乗るのが苦痛だという主張をする人もいることを忘れている。

氏が同じだから大切にし、異なるから大切にしない、などという概念がいったいどこから出てきたのか。

ここには反対派の主張を故意に矮小化しようという意図が見られる。

そして矮小化された「偽反対派」の意見と推進派の意見とを並べることで、 推進派のほうが合理的で正しい主張をしているかのように思わせようとしている。

これが内閣府の行う世論調査のすることだろうか、と疑問の念を禁じ得ない。

そしていよいよ核心のQ9「現在は,夫婦は必ず同じ名字(姓) を名乗らなければならないことになっていますが,「現行制度と同じように夫婦が同じ名字 (姓)を名乗ることのほか,夫婦が希望する場合には,同じ名字(姓)ではなく, それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めた方がよい。」 という意見があります。このような意見について,あなたはどのように思いますか。 次の中から1つだけお答えください。」が登場する。

この中にはいくつも、賛成票を導こうとする細工が見られる。

まず「必ず〜なければならない」と、禁止・強制というイメージを想起させる文言を用い、 現行制度が非寛容で柔軟性のない制度であるかのように思わせようとしている。

そして「現行制度と同じように〜のほか」と、「今と変わらない状態にもう一つ選択が増えるだけ」 という推進派の理屈を補強するような文言である。

また過去の調査では「夫婦が別々の名字を名乗る」と表現されてきた別姓を、 「それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗る」という表現に変え、夫婦や親子、 兄弟姉妹が別姓になるという事実を隠して「元のままである」というイメージを強調している。

そして「『〜ことができるように法律を改めたほうがよい。』という意見があります。」と、 ソフトな表現を何重にも使って選択制主張の強さを隠そうとしている。

最後に「〜という意見があります。このような意見について, あなたはどのように思いますか。」 と質問の意図をかなり曖昧にしている。

他の例で考えていただくとよくわかると思うが、たとえば「死刑を廃止すべきだと思いますか」 と問うのと、「『きわめて重大な犯罪の場合には死刑の判決を言い渡されても仕方がない』 という意見があります。このような意見についてあなたはどのように思いますか。」 と問うのとでは回答は大きく違ってくる。

ここまでさまざまな誘導を行ったうえ、回答の選択肢にまで細工がある。

  • (ア) 婚姻をする以上,夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり,現在の法律を改める必要はない(29.9%)
  • (イ) 夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には,夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない(42.1%)
  • (ウ) 夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても,夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが,婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては,かまわない(23.0%)

強調部分に注目していただければわかるとおり、 「選択制度に反対」と受け取れる内容については「必ず」「べき」と断言調の強い言葉が用いられるのに対して、 「選択制度に賛成」と受け取れる内容については「かまわない」と寛容さをあらわすやわらかい言葉が用いられている。

人間の心理にはバランス感覚というものがあり、どちらか一方の主張のみを断言的に支持するよりは、 互いに配慮したうえでやわらかく主張するほうを好むものである。

その心理を利用して、この制限された選択肢の中から選ばせるのであるから、 これが誘導でなくてなんだというのだろうか。

しかしそこまでしても(イ)を選択した人は全体の42.1%にとどまったのである。

そこで登場してくるのが(ウ)の選択肢で、これは「同姓原則は維持すべきだけれど通称ならかまわない」 という意見であり、客観的に見て選択制度には賛成していないのだが、なんと推進派はこれを 賛成票に計上したり(29.9%対65.1%)、反対票に計上しない(29.9%対42.1%)ことによって、「賛成が反対を上回った」といいだしたのである。

しかし実際は(ウ)は反対票に計上すべきもので、そうすると賛成対反対は42.1%対52.9%で、 相変わらず過半数が反対であり、反対のほうが上回っているのである。

このような誘導や印象操作、統計操作をしなければ、選択別姓制度の主張を補強することができないほど、 推進派は論理的根拠に飢えているのではないかと思われる。

これらの手法をまったく逆に、選択制度否定のために使うとすると、こんなふうになる。

まず少年犯罪の増加や凶悪化に関する質問をする。続けて「これらの問題は家族よりも個人に偏重した考え方の家庭が 増えてきていることと無関係ではないという意見がありますが」というような質問。

そして核心の質問は「現在の法律では結婚して新しい家庭を作るときに、新しい家庭の名前となる 名字を、夫または妻のどちらかの名字から選ぶことができますが、どうしても両者とも名字を変えたくないので、 夫婦の名字をそれぞれの旧姓のまま、異なる名字を名乗ることを選択できるように法律を改正したいという 運動があります。この運動についてどう思いますか。」とする。

回答の選択肢は

  • (ア) 名字を変えたくないという考えを最優先させるべきなので、たとえ夫婦や親子、 兄弟姉妹が異なる氏を名乗ることになっても、法律を改正すべきである。
  • (イ) それぞれが自分の名前をどう名乗るかまで干渉する気はないが、 法律を改正する必要があるとまでは思わない。
  • (ウ) 名字を変えたくないという考えは尊重すべきだが、 別姓は職業上の事情があるときに限って認めるべきである。

こんな感じだろうか。

(ウ)は実際には賛成に数えるべきだが、結果については(ウ)を反対派に入れたり、 賛成派に入れないで数え、全国紙で「反対が圧倒的多数」などと報道する。

こういうやり方をしたらどうなるか、考えてみてほしい。それほど統計というのはデリケートで 操作されやすいものなのだ。

公正中立の立場であるべき内閣府の調査が、ここまで誘導的に推進派寄りになってしまっては、 公平で客観的な議論が阻害されてしまう。

それぞれに意見が異なるのは当然のことだが、民主主義国家であれば、それぞれがきちんと根拠と 論理を示して議論をし、最善の方策を探るべきであって、このように権力や権威を利用して、 自らの主張に有利なようにみせかけようとするなどということは、あってはならないことだと思う。